2018学習交流集会報告

 

2018年 教育の自由を求める学習交流集会報告
誰が「日の丸・君が代」を必要としているのか?

2018年2月17日(土) 14:40~17:20 あーすぷらざ


Ⅰ 事務局から2件の基調報告を行い、その後成田洋樹さんの講演がありました。質疑も活発に行われました。

★【司会より】手こぎのボートで進む先が見えないまま背中に近づく滝の音を聞いているような状況下、戦争で真っ先に蹂躙される人権、改憲、それに棹さす道徳教科化の問題やマスメディアについて考える会にしたい。

★【事務局より】
〈基調提起1〉日の丸君が代問題を中心とする対県教委交渉の報告
○県の見解は「(国旗国歌を尊重する)心情と態度を育む」と「心情」にまで踏み込んだ記述は学習指導要領を逸脱し問題ではないか。
国旗国歌法成立時の野中官房長官や首相・文科相答弁は立法趣旨を述べている。拡大解釈になっているのではないか。
○起立斉唱の自由を生徒保護者に告知すべきであること。
○足柄地区で採択された教育出版の「道徳教科書」同様に、県保健体育課作成のオリンピック関連パンフレットもオリンピック憲章に反して「国旗国歌」として記述してあったことについて。
○不起立職員への「指導」を止めること。
◎以上について見解を求めたが、県教委は明確な回答を避ける態度に終始した。今後、再交渉の場を持つ。合わせて市民とともに侵略の歴史に学びつつ県や文科省に説明責任に基づいた学校現場への周知を求めて行く。

〈基調提起2〉道徳教育をめぐる現場と子どもたちへの圧迫について
○道徳・英語教育を通した義務制現場の疲弊が加速することを憂慮している。
○高校学習指導要領でも愛国心や「領土問題は存在しない」とする政府見解の押しつけが進んでいる。
○トランプ米大統領の核兵器小型化にも日本政府は全面支持の立場。Jアラート問題に見るように国民の動員が懸念される中、市民の抗議や意見表明を「予防拘束」で押さえ込もうとする動きを危惧する。
○道徳教科化は「評価」の問題が見過ごせない。担任のみでなく校長や地域の人など複数の目で見取ることがうたわれている。
○県教委作成の道徳教育実践例(6年生)では、日本が誇れるものとして剣道の礼儀作法を生徒に挙げさせる。それでは考える道徳でなく、教員の意向を子どもたちが忖度する授業になってしまう。
○国旗国歌の強制を「マナー」や他国の国旗国歌への敬意と同列に扱うゴマカシが続いて来た上に、教育勅語復活の危険がある。
○若い人たちが排外主義に誘導されている現状を直視して議論し、声を上げて行かねばならない。


Ⅱ講演:「道徳の教科化と教育勅語~報道の現場から~」(要旨)
 成田洋樹さん(神奈川新聞記者)

◆大津のいじめ自殺事件を契機として道徳教科化が具体化した。この4月からは小学校で授業が始まり、今夏には中学校の教科書採択もある。文部科学省は「考え、議論する道徳」を目指すといっているが、実際に採択された教科書に目を通すと、ルールや決まりを教え込むような旧来型の教材が少なくなかった。子どもの自由な発想を妨げたり、集団行動が苦手で周りの子と違う行動をする子への差別や排除のまなざしを植え付けることにならないか懸念される。

◆森友問題を契機として、戦時中の軍国主義を支えた教育勅語が注目を集めるようになった。戦後の国会決議で国民主権の憲法に反するとして明確に否定されたが、閣僚や官僚から「教育勅語にはいまでも通用する部分がある」という答弁が相次いだ。安倍政権は「憲法・教育基本法に反しない限り、使用については問題はない」という閣議決定を行うなど明確に否定しなかった。これまで通り、歴史の授業の中で批判的に取り上げる場合以外の使い方は考えにくいが、使用することについて明確に否定しない政権の姿勢は「本音は教育現場で肯定的に使わせたいのではないか」という疑念を持たれても仕方がない。

◆1月末に神奈川県内で一斉にJアラートのサイレン再生訓練が行われ、子どもたちが頭を抱えてうずくまる訓練を行う学校もあった。いたずらに不安をあおりかねない訓練ではなかっただろうかという疑問が募る。意に沿わない形で集団に従わざるを得ない空気が知らぬ間に作られていないか。道徳教科化や教育勅語の問題と同じ文脈で考える必要がある。

Ⅲ【質疑&集会の結び】

○参加者からは、道徳の評価について各市の情勢の報告も含めた意見・質問が活発に出ました。
客観報道など、メディアの報道のあり方についても議論となりました。
○最後に事務局から、高校用学習指導要領で新科目「公共」を軸に特別活動等、あらゆる教育活動の場面で道徳教育が推進されて行くと、生徒がタテ・ヨコから「串刺し」にされるような恐ろしさを感じる。集会で得たものを積極的にそれぞれの足もとから活かしてもらえれば、と締めくくりました。

 *(当サイト編集人から…成田洋樹さんの事実をしっかりとらえて考える姿勢に学んで、会の取り組みに活かして行かねばと思いました。)